グッドウィル インタリオリング
又また29歳でアンティークショップの店長だった時に、初めてロンドンへ買い付けに行った時のお話です。
それまでアンティークジュエリーを買った経験は全く有りませんでした。
初めてのロンドン買い付けで、自分が何時も身に着けていられるアンティークのインタリオリングを絶対に買う決心を、ロンドンへ行く前からしていました。
最初に訪れたバーモンジ―マーケットのショップで気になるリングを見つけて試着をしました。他にも数点のインタリオリングを見ましたが、もちろん直ぐには決められません。
翌日のポートベローロードマーケットでも目を留めたリングを見せてもらうと「あれっ?このリングは昨日見たのと同じだ。同じものが幾つも有るはず無いのに何故だろう?」と不思議に思いました。
私はマーケットでジュエリーを見る時には、ケースの中の品物しか見ていません。実際に買う決心をした時に初めて、そのブースのディーラーと顔を見合わせて話します。そこに有るリングがどのディーラーの商品なのかという認識が全く有りませんでした。
つまり昨日バーモンジ―で見たリングを持っていたディーラーが、今日はここポートベローロードに来てブースを持って営業していたのです。だから同じリングがここに有った訳です。謎が解き明かされました。
昨日も今日も同じリングに目を留めて見せて貰ったというこの事実は、自分が本当にこのリングを好きに違いない、という事に気付きました。
それで改めてインタリオのモチーフやシャンクの模様、指に着けた時の雰囲気、ダメージが無いか等細かい所まで何度もチェックしました。
本当はクレストの輪郭を持ったインタリオリングを第一候補としていたのに、オーバルなのがちょっと不本意ですが、でもホールマークが綺麗に彫られています。錨とアルファベットのNがはっきりと判読でき、1862年にバーミンガムにあるメーカーで作られた指輪という事が判ります。625は15ct.ゴールドの表記。その隣のEと半欠けのVはメーカーマークです。
(このメーカーマーク、実は最初綺麗に入っていたのですが、日本でサイズ直しをした際にこうなってしまいました。ごめんなさい。
シャンク外側、横の片側に亀裂が入っているのが、元々だったのか、サイズ直しの時に成ったのかは不明です。)
こんな良いも悪いも色々な要素を検討して考えた結果、不思議なご縁も感じるし、これにしよう!と決心しました。
これが私とグッドウィルリングとの出会いでした。
GOOD WILL TOWARD MEN の意味はその時点では良く理解していませんでした。
その後ホームページを作る際にパソコンで調べてみたところ、聖書の中の一文であることがわかりました。
Glory to God in the highest, on earth peace, good will toward men.
「いと高き所では栄光が神に, 地上では平和が,善意の向かう人々に」。
電網聖書『ルカによる福音書 2:14』
とても安らげる文言で本当に良かったです。
この指輪の初代オーナーは、おそらくキリスト教と深い関わりを持っていたのですね。
私で何代目になるのでしょうか。
このインタリオリングとのお付き合いは今年でもう26年目に突入しますが、何時見ても可愛らしく微笑んでくれます。きっとこれから先もずっと永遠に。